監視カメラやレコーダーの選定は業者に丸投げという方が多いのですが、いくつかのポイントをおさえておけばより良いシステムの導入につながったりコストを抑えることが出来たりします。カメラやレコーダーの選定に当たってどのようなことに気を付ければ良いのか解説します。

監視カメラシステム導入の目的

まず、これが決まらないと始まりません。目的としてはいろいろなものがありますが、代表的なものとしては、防犯、監視、調査、情報発信です。複数の目的を設定する場合もあるかもしれません。
具体的な例としては以下のようなものがあります。

  • 店舗内への設置・・・万引き防止、犯罪抑止、従業員管理、金銭授受トラブル防止/解決など
  • ビル内外への設置・・・不審者侵入の防止、入退出者の把握、侵入禁止領域の監視など
  • 街頭への設置・・・防犯、犯罪の早期解決
  • 公共施設への設置・・・防犯、情報発信
  • 河川等への設置・・・災害防止、情報発信
  • 工場への設置・・・製造工程の管理、不法侵入防止

上記は一例ですが、導入の目的は、業種などにもよりさまざまです。
目的を決めることで必要なカメラの機能やシステムが決まってきます。

設置場所を決める

目的が決まればどこに設置するべきかが決まります。屋内なのか屋外なのか、設置する場所の高さ、位置を決めます。設置する場所の高さ、位置については出来るだけ被写体に近い方が映像的には好ましいのですが、イタズラなどを考慮する場合は高所に設置します。目立った方がよいのか目立たせたくないのかなどは目的によって異なるでしょう。設置場所を決めるということは、導入するカメラの数を決めるということでもあり、数はコストに関係してきます。不要に多くのカメラを導入することは避けなければなりません。目的によっては、施設の内外を全てカメラで網羅する必要はないかもしれません。設置場所は建物図面を用意してそこにカメラの向きと取付高さが分かるよう書き込みます。

システム要件を決める

これは主にどのような運用を行うかということです。運用方法が決まればシステムの要件も決まってきます。具体的には、録画は必要なのか不要なのか、ライブ映像の表示は必要なのか不要なのか、遠隔から映像を見る機能が必要なのか不要なのか、カメラのレンズ方向を変えながら見る必要性があるのかなどです。また録画データの重要性についても考慮しておく必要があります。録画データは重要であることは間違いないのですが、どの程度重要かによってデータの置き場所も変わってきます。現地にレコーダーがある場合は盗難や破壊、データ削除などのリスクが出てきます。システムの汎用性/メンテナンス性も考慮しなければなりません。もし継続して安定した運用を行いたい場合はIPカメラシステムを選択するべきですし、それよりもより安いコストを重視するならアナログカメラシステムが選択肢となります。

カメラの仕様を決める


カメラの仕様は細かく見ると非常に多くの項目がありますが、留意するのは以下でよいでしょう。
カメラの形状・・・カード型、ドーム型、ボックス型、バレット型、全方位型などに分類されますが、目的と設置場所により決定します。全方位型以外は見た目の問題で性能との関連性はないため、屋内で棚などに置くだけならカード型、目立たせたくない場合はドーム型、目立った方がよい場合はボックス型、バレット型が選択されます。全方位型については、その他のカメラと異なり名前のとおり360度全方位を把握するためのカメラとなります。
防塵/防水機能・・・屋外設置であればこれは必須条件であり、IP66準拠が推奨です。
解像度・・・映像の精細さの項目となりますが、現在ではFullHD(1920×1080)かHD(1280×720)の実質2択となります。より細かい部分を見たい場合はFullHD、そうでなければHDです。特種なカメラでは4Kの高解像度のカメラもありますが、屋外の広範囲を把握する場合などに採用するぐらいでレアケースです。全方位カメラの場合には解像度自体はFullHDより大きくても部分部分を補正して見ることが一般的なので実質解像度はFullHDより悪い場合もあります。
最大フレーム数:これはあまり気にする必要はありませんが、現在の一般的なカメラでは20~30が最大となっているはずです。監視カメラでの標準的は録画フレーム設定は3~6程度なので、十分でしょう。より滑らかな映像が必要であるならば30や60のモデルを選択します。
水平画角・・・捉えられる最大の映像幅です。例えば90°の場合は部屋の隅に設置して交差する壁ギリギリ位までを見ることができます。より広い範囲をとらえたい場合は100°、110°など広角のカメラを選択します。
IRの有無・・・IRは赤外線ライトで真っ暗闇でも映像を見ることができます。現在のカメラはかなりの低照度でも映像を見ることが出来るため本当に光源が全くない場所でなければ必要ないかもしれません。
WDR機能・・・必要のない場所では全くいらない機能ですが、逆光となるような設置場所では必須の機能となります。明るい部分は明るさを抑え、暗い部分は明るく補正することで見やすい映像にします。

レコーダーの仕様を決める


まず、レコーダーを現地に設置する物理レコーダーにするのかクラウド上に録画するクラウドレコーダーにするのかを決めます。これはシステム要件を決めると自然と決まります。録画データはとても重要で破壊や盗難を絶対避けたいという場合はクラウドレコーダーになります。次に録画設定を決めます。録画品質を良くすればするほどデータ量は大きくなり、録画時間の短縮や録画領域の確保のためのコスト増につながります。そのため最高品質で録画することは稀です。用途・目的によりますが、一般的には圧縮方式はH.264、VGA(640×480)~HD(1280×720)程度の解像度で5fps、H.264の圧縮率30当たりが標準的な設定です。

レコーダーの接続可能なカメラ数:設置するカメラの数だけ接続出来なければなりません。NVR(ネットワークビデオレコーダー)の場合は極端に数が多くない限り気にする必要はありませんが、DVR(デジタルビデオレコーダー)の場合は最大接続数の確認は必須です。
録画容量:一般的にはHDDの容量で表記されています。さまざまな容量がありますが、カメラの総数、録画品質設定、必要な録画期間を考慮して選択しなければなりません。計算は面倒ではありますが、基準となる数値を覚えておけば算出可能です。
カメラ1台、H.264圧縮、解像度:1280×720、フレームレート5fpsの時に2TBで120日間程度です。
上記でカメラが2台になれば録画期間は60日になりますし、さらにフレームレートを倍の10fpsにすれば録画期間は30日となります。
ただしH.264圧縮は映像にどの程度の動きが含まれているかで同じ時間でもデータ量が異なるため上記はあくまでも目安であり、実際の選定時にはぎりぎりの容量ではなく余裕をもった容量の選定が必要です。そうでないと想定した期間の録画が出来なかったり、想定した録画品質よりも落とさなければならなくなるかもしれません。

モーション検知録画と常時録画:モーション検知設定は一般的にはカメラ側での設定ですが、レコーダーの仕様を決める場合はどちらの録画方式にするかを決めておかなくてはなりません。モーション検知のメリットは動きのあるところだけを録画しておくので常時録画よりもデータ量を節約できるところです。しかしデメリットとして、録画されてないところは本当に何も起こってなかったのかということが証明出来ないという点があります。例えば検知機能が調子悪くて録画していなかったのではないか、通信が不安定で映像信号が来ていなかったのではないかという録画されてない別の可能性は否定できません。しかし常時録画であれば、何も起こってないこと自体が録画されているため、何も異常は起こっていないということが明確です。

以上が監視カメラシステムを導入する上で必要な基礎知識となりますが、例えば業者に相談する場合でもこれらの情報を整理しておいて話をした方が各段にスムーズですし、的確な提案をしてもらえるはずです。何も分からずに丸投げでは提案内容についても全て業者任せになってしまい提案内容の判断も難しくなります。

それでは最後にモデルケースとして「マンションへの監視カメラの導入」について検討してみましょう。

マンションへの監視カメラの導入

以下のようなマンションに監視カメラを導入する場合どのように考えればよいでしょうか。

  • 導入の目的
  • 防犯と不審者侵入の阻止、事件発生時の迅速な解決

  • 設置場所
  • マンションでは外構部と1F共用部、エレベーター内へ設置するのが一般的です。通常2F以降の共用部廊下などにはコストの観点から設置しません。
    設置場所を検討すると以下のような設置場所が考えられます。さてどこへどのような方角でカメラを設置するべきでしょうか。
    敷地内駐車場2台
    敷地内駐輪場2台
    エントランスホール1台

    ひとつの考え方としては以下のような設置があります。

    カメラの視野が重複しないこと、セキュリティ上重要なポイントに漏れがないことに注意して設置場所を検討します。
    予算に余裕がありもう1台追加するとすれば風除室から管理事務室方向へという感じでしょうか。そうすると外廊下から出ていく人の顔も把握でき管理人室に立ち寄った人の様子も把握できます。

  • システム要件
  • 録画は必要で最低2週間程度は保管できるようにします。ライブ映像は必ずしも必要ありませんが、管理人室があるのでそこで見ることが出来るようにします。ただし、管理人室は広くはないためコンパクトなシステムが理想です。遠隔からの閲覧は不要です。録画データについてはトラブルが発生した場合に必要ですが、トラブル発生の可能性は低く、クラウドで録画するほどの重要性はありません。

  • カメラ仕様
  • それぞれの場所ごとのカメラ仕様を決めていきます。
    カメラ1
    駐車場及び周辺歩道の監視です。それほど遠距離までは必要ないため、解像度HD、画角は90°程度。監視していることを知らしめるためボックス型カメラとします。IRは不要。屋根があるか不明ですが屋外設置を想定し防塵・防水性能はIP66準拠のモデルを選定。
    カメラ2
    自転車置き場の監視です。この位置は周辺からも死角となり、外部者の無断侵入も容易なため設置の必要性が高い場所です。遠距離までは必要ないため、解像度HD、画角は90°程度。監視していることを知らしめるためボックス型カメラとします。天井や照明があると思われるため、屋内用でIRは不要。
    カメラ3
    エントランスホールで入出場者の監視で最も設置重要度の高い場所です。ひとつのカメラで出入口からは入場者、エレベーターからは出場者の顔の確認、メールコーナーを合わせて監視します。ボックス型は威圧感があるのでドーム型カメラを選定。入出場者の顔がはっきり認識できるようFullHDカメラで画角は100°程度、屋内用、IRなしを選定します。
    カメラ4
    恐らく天井はあると思われるのでカメラ2と同様です。
    カメラ5
    一台で駐車場とバイク置き場までカバーします。少し距離があるのでFullHDで広角より、屋外用でボックス型IP66準拠のカメラを選定します。

  • レコーダーの仕様
  • 5台のカメラの映像を2週間以上保管したいので4TBのHDDを搭載したコンパクトなNASレコーダーを採用します。4TBあれば2週間の常時録画には十分な容量のため常時録画とします。録画の解像度はそれぞれのカメラの上限とし、5fpsで録画します。

    後は条件にあったレコーダーやカメラを選定するだけですが、上記の他一般的な考え方としてPoE給電を使用した方が電源を引く工事が不要になりコストメリットがあります。
    このようなシステムの選定に必要な情報を整理してから実際の構成を考えれば、不要に高いスペックのカメラを選定したりすることもなくなります。

上記と同様のシステムについては以下にてご覧いただけます。
NAS監視カメラシステム